2週間の"ふるさとワーキングホリデー"で体験した伊豆の最南端暮らし
ふるさとワーキングホリデーとは?
皆さんは”ふるさとワーキングホリデー(以下ふるさとワーホリ)”という制度をご存じですか?
総務省のポータルサイトによると、ふるさとワーホリとは
都市に暮らす若い人たちが、一定の期間、地域に滞在し、働いて収入を得ながら、地域の人たちとの交流の場や学びの場などを通して、通常の旅行では味わえない、地域を丸ごと体感してもらい、地域とのかかわりを深めてもらう
という趣旨の制度。
このふるさとワーホリ事業、実は今年度より南伊豆町でも実施しています。
今回はそのお二人目として参加してくださった村田有季子さんに体験記事を書いていただきました!
はじめまして
ふるさとワーキングホリデーで南伊豆町役場に来ました、村田と申します。
南伊豆町下賀茂を拠点に、平日は南伊豆町役場商工観光課でお仕事をしました。
勤務後と休日は観光や地元の方との交流を通して、リフレッシュ、および南伊豆町を学ぶ機会となりました。
今回の記事では、私の自己紹介、ふるさとワーホリの動機、それから実際に参加して感じたことを紹介できれば。と、思います。
私の紹介
茨城県水戸市近郊の町で生まれ育ち、10歳の時に父の仕事の関係で東京へ出て以来ずっと東京に住んでます。
子供の頃は田んぼと海が身近にあったので、大人になった今でも見るとホッとします。昨年からのコロナ禍で外出するのも気を使い、海を見たくても行けない。という、窮屈で我慢の日々を過ごしていました。それもあって、昨年から移住を考えるようになりました。
とはいえ、移住には少しばかり不安がありました。
その不安とは、次の3つです。
その1:移住先に住む方との関係
私の住む東京では近所付き合いがほとんどありません。そのため、「人付き合いが濃い」と言われる移住先でやっていけるかの不安です。
その2:移住先での働き方
30代の私のキャリアは事務職と福祉職です。特別なスキルがない中でやっていけるかの不安です。
その3:実生活を送る上でのギャップ
この点はあまり不安を感じていないです。けれども、移住後に「移住前に思っていたのとは違う」という話は耳にするので、事前に知って心の準備をしたいと感じるようになりました。
その中で、知ったのが南伊豆町のふるさとワーホリでした。
なぜ南伊豆町でふるさとワーホリを?
その理由は3つあります。
その1
移住への3つの不安(人間関係・仕事・今の生活との違い)を参加することで、少しでも解消できると思ったから
その2
南伊豆町のワーホリを紹介してくださった機関が信頼できるところだったから
その3
海がきれいな場所へ、東京の自宅から空路でも航路でもなく、陸路で行けるから
期間中の過ごし方は?
(お仕事の内容)
南伊豆町役場商工観光課でふるさと納税に関わる仕事
具体的には?
・POPの作成と町内の宿泊施設に配布
(ふるさと納税のご案内の作成と町内の宿泊施設にお届けすること)
・封入封緘と開封
(お知らせの封入封緘と書類の開封)
・ふるさとワーホリの体験記
(noteにて、東京都から南伊豆町へ初めて来た私が体験したこの町のふるさとワーホリの内容と町の魅力を発信)
ふるさと納税に関する書類の発送日があって、その日は発送の準備があります。それ以外は自分の強みや挑戦したいことができる環境にはありました。
実際に私の場合は、事務職の経験を活かして前任者がデザインされたPOPを組み立てるお仕事や情報発信力を鍛えるために体験記事の作成を行うことができました。
また、ふるさと納税のご案内のPOPを町内の宿泊施設へお届けする際に、同行もさせていただきました。そのおかげで、観光の町であるこの町で宿泊施設を営んでいる“人”のご様子をほんの一部分ですが感じることもできました。
(平日のタイムスケジュール)
7:00 起床
好きなことをしてから、朝食や出勤の準備
宿泊先の『ローカル×ローカル』から勤務先までは徒歩5分弱
9:00 ~13:00 お弁当や外食
冬でも15度もあって、空気も美味しく、景色もきれいなので、外で食べることもあった
16:00 退勤
日本の渚百選に選ばれた弓ケ浜で夕日を見たり、商店街をブラブラしたり、それからすぐそばの温泉でのんびりしたり…その時々のやりたいことを自由にすることができた
22:00 就寝
温泉の湯けむりを見ながら食べたおススメのメロンパン
勤務後に弓ケ浜で見た夕日
(休日の過ごし方)
・宿泊先のゲストハウス『ローカル×ローカル』のイッテツさんが運営される、「南伊豆くらし図鑑」という暮らし体験プログラムに参加
・同じくイッテツさんの仲間とリノベーション体験
リノベーションのお昼ご飯は、県内から移住された方が作られた麻婆豆腐を食べました。さらに、美容師の奥様に滞在中髪を切っていただきました。
・地元の方のご自宅で金目鯛をさばく体験
・元地域おこし協力隊員さんが運営されるゲストハウス『Daja』で、移住と協力隊員の経験談を伺ったこと
(宿泊場所)
ゲストハウス『ローカル×ローカル』
宿主のイッテツさんは数年前に東京から移住された方
親切なだけではなく、一人一人の思いを大切にされる方
そして、『ローカル×ローカル』をきっかけにいろいろな人やモノやコトとつながって、その人ならではの物語を紡いでいくことを願っている方
『ローカル×ローカル』だからこそできる三つのこと
その1 1組限定の暮らし体験
「南伊豆くらし図鑑」という暮らし体験プログラムを通して、地元の方の日常に触れることができます。
私がこれまで出逢ったことのないご経験や暮らしをされている方がたくさんいらっしゃるので、お話するだけでも価値があると思いました。
その2 リモートワーク
町の中のワーケーションエリアも案内していただけます。
その3 おススメの場所や町に住む“人”の紹介
町の中にある景色やお店だけではなく、この町に住む“人”も紹介していただけます。イッテツさんのご紹介で地元の方や移住された方、さらには研修でいらしていた北海道の地域おこし協力隊の方から生の声を聴くことができました。その協力隊の方とイッテツさんとの話の中で、私がよく口にする「地域のため」は、結局は自分のためであることに気づかされました。さらに、協力隊の方からは北海道の道北エリアでも自治体によって募集の仕方や協力隊に対する考えの違いがあることを教えていただきました。
関東から移住された方のお店で、イッテツさんと北海道の地域おこし協力隊員さんの歓迎会の様子
(食事)
基本自炊で、外食もあり。
関東から移住された方のお店『海老しか勝たん』でランチ
(移動手段)
徒歩と自転車
徒歩圏内にスーパー、郵便局、それから温泉もあるので楽です。
自転車で少し頑張れば日本の渚百選に選ばれた『弓ヶ浜』へ行けるので、勤務後に海へ沈む夕日を見ることもできました。
車があると、伊豆半島の最南端である石廊崎の絶景、断崖絶壁にある石室神社、それからジオパーク巡りもできるので便利です。
ペーパードライバーの私は役場の職員さんに連れて行っていただきました。
南伊豆町の好きなところ!それは“人”!
海が大好きな私は弓なりの海岸線が続く『弓ヶ浜』、石廊崎の絶景、それと港町の子浦の景色に心癒され、(ずっとずっとここにいたい)、(いつまでもここにいたい)、(家に帰りたくない)、と思いましたが、南伊豆町で景色よりも魅力に感じたのは、ここで暮らす“人”でした。
ということで、この二週間で出逢った南伊豆のステキな方や温もりを感じた場所を紹介したいと思います。
いつもであれば3つに絞るのですが、絞るのに悩むほどだったので今回は5つ紹介します。
その1 『酒匠蔵 しばさき』山本さん
「日本酒や焼酎を購入されたお客様にご満足いただきたく日本各地の蔵元へ直接足を運び、造る人の考えや想いを聴き、その“心”を伝えたい。」との想いで50年以上酒屋を営むおじさん。力強くご自分の想いとこれまで積み重ねて来られた様子を語る姿がカッコよく、私もお手本にしたいと思いました。
その2 『珈琲村』柳沢さん
「数十年前に移住するまでは、東京で飲食店を営んでいた」と、仰る人生の大先輩である飲食店のおばさん。私がこれまで知らない世界の話が次から次へと出てくるので、お昼の時間があっという間に過ぎていきました。ご飯も思う存分食べられるほど出してくださるので、ペコペコだったお腹も十分に満たされました。
その3 『下賀茂熱帯植物園』安藤さん
「車が運転できると世界が広がるよ」と、生き生きとした表情でお話しされる植物園のおじさん。植物の話はもちろん、車中泊旅行!車での旅の魅力やファッションの話も出てきて、私までウキウキわくわくしました。
その4 『和カフェ きゃら』加畑さん
『ローカル×ローカル』のイッテツさんのご紹介で伺った、地元の方が集う飲食店。珍しいお酒やボリュームがあって病みつきになる「とん平焼き」だけではなく、お店のおじさんおばさん、それから地元に住むお客さんともお話ができて温かい気持ちになりました。
その5 『ゲストハウス KODO・KODO』滝瀬さん
イッテツさんが運営されている「南伊豆くらし図鑑」で暮らしにお邪魔させていただいた、約10年前に埼玉県から南伊豆町へ移住され、現在子供たちのサポートとゲストハウスを営まれている方。私を温かい笑顔で迎えてくださって、移住や将来への不安もその方のこれまでのご経験から優しくアドバイスいただきました。それはまるでお母さんのような温もりを感じさせてくれました。
ふるさとワーホリ参加して得たもの
(不安だった気持ちに変化が?)
あっという間の2週間、この期間の中で先に挙げた移住への3つの不安に変化があったのか。
その答えを一つずつ述べたいと思います。
その1:移住先で暮らす方とやって行けるかの不安
役場の皆さんも地元の皆さんも話しやすく、さらに移住された方同士のつながりがあることを知って、その不安が軽減されました。
その2:移住先での働き方への不安
この地で起業された方や地域おこし協力隊員さんの話、それからこれまで私が知らなかった働き方なども伺えて、不安が少なくなりました。
その3:実生活を送る上でのギャップへの不安
町役場近辺の利便性がいいこと、さらには近所付き合いなども伺えて、不安が減りました。
(ふるさとワーホリに参加してよかったこと)
ふるさとワーホリを通して感じた、よかったことを3つ紹介します。
その1 3つの幸せ
通勤時間の短さ・近くに温泉がある・人の温もり
東京での往復3時間の通勤時間、かつ満員電車からの解放は幸せでした。
温泉ソムリエを取るほど大好きなので、歩いて行ける範囲に温泉があるのは幸せでした。
地域の方がオープンマインドで、優しいので人の温もりを感じることができました。
湯けむりを見て過ごせる幸せ
その2 南伊豆町を知ることができたこと
時間と労力をかけたからこそ得られたものがありました。
それは「南伊豆暮らし」を体感でき、だからこそ観光や東京での移住セミナー以上に南伊豆町を知ることができました。
それも、私にとってはハードルが高かった移住や地域おこし協力隊よりも気軽な気持ちで参加できました。
その3 気になる点
よくしていただいたこと、またポジティブな性格なのであまり気になることはありませんが、いいことだけでは嘘っぽくなるので、あえて挙げたいと思います。
それは、交通の便です。
二週間のふるさとワーホリだけであればあまり気になりません。 ただ、実際に暮らすとなると、公共交通機関の便数からも車があった方がいいのは。と、思います。なので、ペーパードライバーの私は車の運転になれるかです。
(こんな方におススメ)
ふるさとワーホリを次の方におススメしたいです。
その1 移住を検討されている方
南伊豆町役場や地元の方、さらには移住された方と知り合う機会があります。自分から積極的に話しかけることで、より多くの方々ともお話ができるでしょう。その中で、東京でのリアルやオンラインの説明会では得られない情報を聞くこともできます。また、ふるさとワーホリを通して実際の生活をイメージすることもできます。
その2 都会での生活に疲れた方
海や山が近い上に、疲労回復とうつ状態の方にいいとされる下賀茂温泉があります。
都会での慌ただしい生活や雑踏に疲れた方は心が癒され、リフレッシュできる機会になるでしょう。
その3 自分の将来を見つめなおしたい方
現在住んでいる場所と違う町に滞在し、そこで初めての職場や仕事をすることで今までにない経験ができます。さらに、新しい出逢いや人生の大先輩方との話の中で、たくさんの気づきがあることでしょう。その経験と気づきを通して、自分を見つめなおし、これからの自分の歩みたい人生を考えることもできます。
最後に
初めての土地、かつなれないお仕事をしながらの生活で不安な気持ちになったこともありました。けれども、地元の方を含めて、皆さんの温かさやふるさとワーホリの担当者である山口さんはじめ、役場の皆さんが「今、不安に感じていることない?」等、いろいろとお声掛けしてくださいました。そのおかげで、安心して過ごすことができました。
2週間という、決して長くはないけれど、初めて来た南伊豆の地で、いろいろな方々との出逢いを通して、濃い時間を過ごすことができました。
この場をお借りして、お世話になった皆さんへお礼を言いたいと思います。
そして、桜まつりのある2月とシュノーケリングができる夏に友達と友達の犬と一緒に、また来ます。さらには、どんな形になるのかはわかりませんが、小さい形だったとしても南伊豆町と関わり続けることができたら。と、思っています。
(補足)
私のふるさとワーホリの期間は12月中旬から年末にかけてでした。そのため、南伊豆町の年末年始を知りたいと思って、来年のあたままでここに滞在してます。
※2021.12.28に記事を作成